そうだ、井戸端会議を!発達障がいの子どもの親にこそ、ワイワイガヤガヤが必要だ

「小学校では普通学級に入れるべき?」「先生にどう伝えたらいいんだろう」「パートナーとうまく悩みが共有できない」――。

発達障がいのある子を育てる親にこそ、気軽に悩みを打ち明け、情報交換ができる場所が必要なのではないか。そう思ったことを発端に始まった小さな集まり。それがポレポレの活動です。自身も障がいがある子の母である代表の粟絵美さんに、お話をうかがいました。

たった一人では気づけないことがたくさんある

粟さんは2児の母親。自閉症スペクトラム症を抱える長男との日々は、奮闘の毎日でした。あるとき、療育(児童発達支援施設)で「集団生活が大事だよ」と言われ地域の保育園に入園。現場の保育士が毎日「かわいい」と様子を伝えてくれたことが、粟さんの心を救います。「視線がなかなか合わない、他人に興味を示さない、やめてと何度お願いしても繰り返してしまう…。発達障がいのある子どもはそういう傾向が強く、母子愛着が生まれにくいということがあります。私も保育園で先生が愛情たっぷりに子どもに接してくれたことで、母子愛着が大事だと気づいた。一人でいると息子への愛情になかなか気づけなかったと思います」と粟さんは振り返ります。

お願いの仕方も悩みの一つだった特別支援学級での日々

小学校に通うようになってからも、特別支援学級での日々に戸惑うことも多かったと言います。例えばPTA活動。クラス委員が毎年クラスから選出されるため、少人数で構成されている特別支援学級の場合も同様にクラスから選出されます。学校での活動には積極的に参加しようと思っていた粟さんですが、毎年クラス委員は負担が大きく悩みました。「いろいろと学校側は助けてくださってるので、これ以上お願いはできない」「これってモンスターペアレンツだと思われないかな」と、気持ちの伝え方に大きな葛藤を抱えたのだそうです。しかし、その後学校との話し合いの場が持てることになり、委員選出の規定が変更になりました。意思を伝える大切さや伝え方の工夫について知る機会になったと、振り返ります。

お母さんが気軽に話せる「居場所」を

保育園時代からずっと、同級生のお母さんたちとのランチ会を楽しんでいた粟さん。子どもの成長とともに、抱える悩みや不安が変わっていく中で、発達障がいの子の親ならではの情報を交換できる場所もあるといいのではと思うようになりました。学校とのやりとりや、宿題、行事の参加の仕方など、特別支援学級は個々の発達に応じて学校側と相談して取り組むことが多く、「だからこそ、学校の情報や事例の共有なんかを、雑談のように気軽に聞ける場所があるといいんじゃないかと思うようになったんです」。

「発達凹凸っ子の保護者交流会ポレポレ」の活動は、こうしてスタートしました。

「発達障がいの子の保護者の悩みを知ってほしいと思って子どもの支援に関わる方を交流会にお誘いしたことがあったのですが、後で迷惑かな…と気になって。直接先生に聞いてみたら『全然です。何を求めているのか知りたかった』とおっしゃって安堵したんです。そしてその時に思ったんですよね。自分と他人って立場が違うだけで考えていることが真逆なこともあるって(笑) 自分の価値観だけでやっていくことって危険な面もあるんです」。井戸端会議のように気軽に情報交換ができることで、思い込みの枠が取り払われ、その結果子どもにも笑顔で接する機会が増える。そうなると嬉しいと粟さんは笑顔で語ります。

地域に密着で情報をシェア

粟さんがポレポレの活動で大切にしていることは、地域密着+お母さんの目線。発達障がいの子を育てる親の悩みは、進学などのタイミングや学校によっても異なります。そのため中京区という「地域」に特化することで、生きた情報を交換することができています。

さらに、会員制ではなく交流会ごとの参加費制も粟さんのこだわり。会場代と講師が必要なときは講演料から設定し気軽な価格帯にしています。「井戸端会議の延長のように、流動的で気軽なものにしたい」と、親の自主的な意志を尊重しています。「どんな内容も批判しない」「アドバイスや提案が受け入れられなくてもOK」など、一人ひとりの親にとことんまで寄り添うお約束は、参加する人たちの肩の力を限りなく緩めてくれるに違いありません。

交流会の内容も、座談会だけでなく、講義、親子で遊ぶイベントなど幅広く、親の多様なニーズに寄り添った形で運営しています。「発達障がいの子の支援って、行政も一生懸命してくれてたりするんですが、実は親が欲しい情報って意外と取りづらかったりするんです。私たちは数名~十数名くらいの小さい集団で、そこをカバーしたい」と、一人ひとりがよく見える距離感を大切にしているのだそうです。

「住んでる人が住んでる町をよくしたらいい」。行政は行政の、学校は学校の役割があるなかで、一人のお母さんが始めた素敵な思いつき。粟さんの思いは、一人、また一人と共感の輪を広げ、様々な出会いの化学反応を生んでいます。

取材現場より

子どもが子どもの力を十分に発揮しながら成長するためには、環境が大切だとはよく言われます。地域の安全性や教育、園や学校など様々な環境があるなかで、大きな環境要因の一つである「親」のケアはまだまだ十分行き届いているとはいえない現状があります。さらに、発達障がいの子を育てる親だからこその悩みは、経験していないとわからない部分も多く「言ってもわかってもらえないかもしれない」と抱え込んでしまっている方もいるのではないでしょうか。ポレポレでは同じ思いを抱えた人たちと共有することができます。電話相談やセミナーでは肩の力が入ってしまう人でも、ポレポレだと気軽に話せるかもしれません。ちょっと困ったな、しんどいな、そんな風に思っている方は、一度おしゃべりしに行ってみてください。

発達凹凸っ子の保護者交流会 ポレポレ

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Instagram/POREPORE_KOURYUU

今後の交流会予定

2022年

・11月27日(日)10:00~12:00 場所:二条ウタカタ

・12月18日(日)10:00~12:00 場所:二条ウタカタ

2023年

・「福祉サービスについて話せる交流会」1月22日(日)10:00~12:00 場所:中京区いきいき市民活動センター

・「家族交流会」2月23日(木・祝)10:00~13:00 場所:二条ウタカタ

投稿者プロフィール

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ゴトウ クミコ
大阪で生まれ育ち京都に住み着いたライター。
20年前と比べて、嗜好品が酒とコーヒーだけになったのが自慢。
女子を2名産み落としたのは十数年前のこと。
いまだに2人の寝顔で酒が飲めるのも自慢。
絶景と食、おもろい人と会社、団体を探しておもしろがるのがライフワークです。