京都と中京区の歴史 幕末編 その3「誕生!新選組」

(前回までのあらすじ)
「日米修好通商条約」が締結されて外国との貿易が始まると、京都・西陣の織物産業が大打撃を受け、貿易商人に対する殺傷事件が多発します。また、多くの尊王攘夷派の志士が京都にやってきたことで、治安が急激に悪化しました。

京都守護職の設置

京都にやってきた尊王攘夷派の過激志士たちは、天誅(要人の暗殺)や強盗などを行い、治安の悪化が深刻な問題となります。
これを受け、幕府は治安維持のため「京都守護職」を設置。会津(現在の福島県)藩主の松平容保(まつだいらかたもり)が京都守護職に任命され、本陣(宿所)が金戒光明寺(左京区)に置かれました。

京都守護職は、もともと京都の治安維持にあたっていた京都所司代と京都町奉行や、あらたに組織された京都見廻組(幕臣によって結成された京都の治安維持組織)を支配下に置きます。しかし、これらと会津藩だけでは手が回りきらなかったため、新選組を支配下に置いて治安維持にあたらせました。

新選組の誕生

幕府は、庄内(現在の山形県)藩士・清河八郎の献策を受け、将軍・徳川家茂(とくがわいえもち)の上洛(京都へ行くこと)に際し、将軍警護のため浪士(浪人)を募集します。

集まった約200人の浪士たちは、「浪士組」として将軍の上洛に先駆けて京都に向かいます。
京都に到着した浪士組は壬生村(中京区)の民家や寺院に分宿しました。

その夜、清河は浪士組の中から主だったものを新徳寺(中京区)に集め、浪士組結成の目的は幕府のためではなく、天皇に忠義をつくすためだと告げます。

これに芹沢鴨(せりざわかも)や近藤勇(こんどういさみ)を中心とするグループは反発し、浪士組は分裂します。
清河の真意を知った幕府は、清河の計画を阻止するため浪士組を江戸に戻すことを決めました。

江戸に戻ったメンバーは「新徴組(しんちょうぐみ)」を結成し、江戸の警備にあたることになります。
清河八郎は幕臣・佐々木只三郎らによって暗殺されました。

浪士組を脱退した芹沢や近藤のグループは京都に残留し「壬生浪士組」を結成。会津藩の指揮下で京都の警備にあたることになりました。これがのちに「新選組」となります。

その頃中京区では

京都に到着した浪士組(のちの新選組)は、壬生村の郷士宅や寺院を屯所(宿所)としました。
坊城通には兵法調練場として使われた壬生寺をはじめ、新選組にゆかりのある場所が多く存在します。

壬生寺

律宗の大本山。
新選組が兵法訓練所として大砲や武芸の調練に使用していたことから、新選組ゆかりの寺としてよく知られています。
境内にある池の中の島は「壬生塚」と呼ばれ、新選組の墓所として隊士11名が祀られており、近藤勇の胸像と遺髪塔、土方歳三の胸像が建立されています。
無言の狂言「壬生狂言」でも有名で、阿弥陀堂の地階では新選組や壬生狂言に関する資料が展示されています。

壬生寺
京都市中京区壬生梛ノ宮町31
https://www.mibudera.com/

八木家

八木家は壬生の郷士で、その邸宅が浪士組の屯所として使われ、芹澤鴨のグループと近藤勇のグループとが宿所としていました。そのため“新選組発祥の地”とされています。

新選組の初代筆頭局長だった芹沢鴨とそのグループが暗殺された場であり、その際の刀傷の一部が今も残ります。
歴史的建造物として京都市指定有形文化財に指定されています。

現在も八木家の子孫が継承し、和菓子店「京都鶴屋 鶴壽庵(かくじゅあん)」を併設。内部を見学する際は鶴壽庵で申し込みます(解説と抹茶・屯所餅つき)。

八木家(壬生屯所旧跡)
京都市中京区壬生梛ノ宮町24
https://www.mibu-yagike.jp/

旧前川邸

前川家は八木家と同じく壬生の郷士で、邸宅が浪士組の屯所として使われました。
現在は個人宅となっており、内部の公開はされていません。

「池田屋事件」のきっかけとなった土方歳三による古高俊太郎(ふるたかしゅんたろう)への拷問は、前川邸の東の蔵で行われました。また、副長や総長を務めた山南敬介(やまなみけいすけ)が切腹した場でもあります。

土・日・祝日のみ、玄関において新選組グッズと旧前川邸オリジナルグッズの販売が行われています。

旧前川邸
京都市中京区壬生賀陽御所町49
https://kyu-maekawatei.com/

新徳寺

新徳寺は臨済宗永源寺派の寺院です。
上洛した浪士組が分裂し、壬生浪士組(のちの新選組)が結成されるきっかけとなった、清河八郎による尊王攘夷の演説が行われました。
通常は非公開です。

新徳寺
京都市中京区壬生賀陽御所町48

次回、京都と中京区の歴史 幕末編 その4に続きます。

参考文献

『少年少女 日本の歴史』小学館
『県史26 京都府の歴史』山川出版社
大石学『新選組「最後の武士の実像』中公新書
司馬遼太郎『司馬遼太郎の日本史探訪』角川文庫

投稿者プロフィール

kumasaki
kumasaki
大阪で生まれ育ち、SEやDTPデザイナー・オペレーターを経て、京都の某情報誌でいつのまにか編集・ライターになってました。読書と酒と犬をこよなく愛し、面白そうなことに首を突っ込みます。

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