焼きトン/京都ローカルコラム〜街はエイトビート
昭和生まれのRock人間が街の風景を紹介 もりもり
私は、東京で学生生活を送っていた間、塾講師のアルバイトを長くしていました。
塾の業務が終わるのはそれなりに遅い時間となりますので、帰宅途上自宅アパート近くの焼肉屋で夕食をとるのが常でした。
ナムルをつまみながら瓶ビールを飲み、肉を2種類ほど焼いてもう1本飲み、最後にユッケジャンを食べるのがお気に入りのコースでした。
その後、1980年に京都に戻りましたが、当時京都の焼肉屋でユッケジャンを提供している店はほとんどありませんでした。
ユッケジャンの味が忘れられない私は、今のようにネット情報もない中いろいろと調べ、1軒の店を見つけることができました。
さっそく伺って、店主の方にお聞きしますと、
「京都でユッケジャンを提供している店は2軒ほどしかない。全国的にも名古屋から西ではかなり少ないのではないか」
というお話でした。
今ではどの焼肉屋でも当たり前のメニューとなっています。
先日はたまたまコンビニで「ユッケジャンラーメン」なるレンチン食品を発見し、さっそく購入いたしました。
同様に当時の京都ではなかなかありつけなかった関東の味は他にもあります。
ホッピーもその1つでした。
ホッピーは、ビールテイストの炭酸飲料なのですが、一般的には焼酎をこれで割った飲み物もホッピーと呼ばれ、東京の庶民的な居酒屋などでは定番のメニューです。
これも京都で飲めるようになったのはそれほど前ではないと記憶しています。
その嚆矢かどうかは分かりませんが、1990年代に入ってから「ホッピーあります!」と大きな看板を掲げた居酒屋を木屋町通りで見かけ、さっそく入店して飲んだことを覚えています。
庶民の味方といえる安価な飲み物であり、少しアルコール度数が高いこともあって学生などが一種得意げに飲みたがる酒でもありました。
そして、もう1つが「焼きトン」です。
東京在住時の私は、新橋や渋谷などのガード下に軒を連ねる串焼き屋をこよなく愛しておりました。
この串焼きは鶏などの肉ではなく、豚のホルモンを主材料とする「焼きトン」でした。
しかし、京都に戻って串焼きを標榜する店に行きますと、京都らしい上品な?!焼き鳥や牛肉などが出てくるわけです。
私としては一見どこの部位かもよく分からぬ豚のホルモン串が食べたいのであります。
よく関東と関西の肉文化の違い、関東は豚肉、関西は牛肉といったことが語られますが、焼きトンもそれを象徴する食べ物の1つなのでしょう。
その文化的違いにはさまざまな歴史的経過が関わっているものと思われますが、とりわけ戦後の食糧不足を直接的な契機として関東の豚肉文化が大きく展開したようですから、焼きトン屋が戦後から続くガード下の飲み屋街に多いことも頷けます。
最近になって京都でも焼きトンを看板にした店がチラホラと見られるようになりました。
いつの間にか我が家の近くにも焼きトン屋が複数できていて、私などは「ついにそーいう時代になったのか!」と大仰に喜んでいます。
しかし、ちょっとした不満もあります。
京都の焼きトン屋の幾つかでは、焼きトンもまたなにか京都らしい上品な料理になってしまっていて、串が1本ずつ皿に載せられて出てきたりします。
そして、塩や唐辛子以外の洒落た?味付けが既定のものとして提供されたりもします。
もっとモクモクとした煙の中でバーと焼いてもらって、ガーと食べたい私であります。
欲を言えば、たまに頭の上で電車の通過音が響けば最高であります。(まあ単にノスタルジックなBGMを求めているだけですが。)
これはやはり、京都の上品な牛肉文化の名残なのでしょうか。
・・・・・・・・上に書いた内容は、私の狭い行動範囲での個人的な記憶による「年表」です。事実と異なる点も多々あると思いますが、ご了承ください。
<コラムに掲載のお店> 西院の焼きトン屋「けむり」 京都市右京区西院矢掛町21番地 シュール西院 102 TEL 075-874-7550 四条大宮の焼きトン屋「なべや」 京都市下京区高辻大宮町107−5 TEL 075-334-6755 |
投稿者プロフィール
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1955(昭和30)年、東京は世田谷生まれ。
その後、愛知県岡崎などを経て、京都市に到着。
65歳時に癌を患い、抗癌剤の副作用等々で、それまで毎週の芝刈り生活を終了。
現在は専ら家庭菜園で、暑い寒いと文句を言いながら土を耕し中。
今もRock BandでBassなどを担当。
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