壬生は染色の街×コラム連載/街はエイトビート
昭和生まれのRock人間が街の風景を紹介 もりもり
私が現在の居住地である京都市中京区の壬生に転居してきましたのは25年ほど前のことです。
私は東京に生まれ、父親の仕事の関係で愛知県岡崎市を経て京都へと移り、その後も学生下宿、転勤など京都と東京に交代で暮らすような生活を繰り返し、京都市内だけでも数か所に移り住みました。
そのような私としては、今やこの壬生の地が一番長く住み続けている場所となりました。
私の現在の住居はマンションなのですが、このマンションができた当時、それまで減少し続けていた中京区の人口が一時的に増加したとの新聞報道がなされたことを覚えています。
ここはそのような大規模なマンションですが、近隣にもさまざまな規模のマンションがたくさん建設されました。
一説によれば、マンションが建つ前の状態を調査することで地域の歴史が分かるとか。
「壬生」という地名は湧き水の「水生」から
壬生の場合ほとんどが染色工場であり、中規模の染色工場が多かったためマンションも中規模のものが多いとも言われています。
さて、この「壬生」を事典サイトなどで調べますと、多くが「染色の街」と説明しています。
また「壬生」という地名については、古来より湧き水が多かったため「水生」と呼ばれたことの転化であると書かれています。
しかし現在は、染色の街の様子も湧き水も見えにくいものとなっています。
私がこの地に転居してきて間もなくの頃、たまたま近所の事業家の方と話す機会がありました。
その方は今は手広く事業を展開しておられますが、以前はこの地で染色業を営んでいたということでした。
大きな布等を扱うにはそれなりに大きな場所が必要ですが当時の壬生はそれに適した土地があり、また豊富な地下水を利用できたので、染色業の会社が集まってきたというお話をお聞きいたしました。
この良質な湧き水は、高品質な染色に欠かせないものの1つのようです。
今も操業しているこの地の染色業のサイトを見ますと、必ずと言ってよいほど壬生の湧き水のことが書かれています。
その頃近所を散歩していると、私でも知っている通販で有名な「東洋捺染」の本社を見つけ、「ここに本社があるのか」と思って見ていたことを覚えています。
そして、これは最近になって気づいたことなのですが、ちょっと年代物のビルなどを見上げてみますとその壁面に大きく「〇〇染色業云々」と昔日の名称が残っていたりします。
また壬生の街で私がなんとなく不思議に感じていましたのは、新興住宅街には見られない商店街や大人数を相手にするような店舗、飲食店などが少なからず存在していることでした。
この疑問を解いてくれるヒントに最近たまたま出合いました。
女優の原日出子さんが京都の街を「通り」ごとに巡るというテレビ番組(KBS京都制作「原日出子の京さんぽ」)がありますが、ある日再放送されていたその番組を見ていますと、ちょうどこの壬生の地にある「西新道錦会商店街」を歩くという回でした。
そこで商店街の方が話していたことの1つに、この一帯は以前染色産業が盛んで、そこで働く人々によってこの商店街が繫栄したということがありました。
壬生は染色業が栄え、多くの労働者が集まる街であったわけです。
「壬生」は染色の仕事のスタートの地
これを書いていてかなり古い記憶が1つよみがえりました。
高校時代の友人の家は当時右京区で染色の仕事をしておられましたが、その友人が言うには、父親は独立する以前、千本四条を下がったあたりの染色工場で働いていて友人家族もその場所に住んでいたとのこと。
当時まだ幼かった友人が寒い夜などに親に命じられ、四条通りまでたこ焼きなどを買いにいかされていたというような想い出話が印象的でした。
高校時代私も右京区に住んでいましたが、その友人の以前の住処は現在私の住んでいる場所、壬生であります。
壬生は、染色業に携わる人々が多く住んで賑わっていただけでなく、その後多くの方が独立されて市内各地で染色の仕事を継続されていく、そのスタートの地でもあったようです。
壬生という地域がその土地、地下水、さまざまな条件が整って「染色の街」として栄え、存続し続けていることは、ここに住む者が覚えておくべきことの1つではないかと思います。
投稿者プロフィール
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1955(昭和30)年、東京は世田谷生まれ。
その後、愛知県岡崎などを経て、京都市に到着。
65歳時に癌を患い、抗癌剤の副作用等々で、それまで毎週の芝刈り生活を終了。
現在は専ら家庭菜園で、暑い寒いと文句を言いながら土を耕し中。
今もRock BandでBassなどを担当。
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